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マンスリーマンションには、コツがある

知人のフリーライターのT君(二九歳)は、二年ほど前から東京、世田谷に部屋を借りて住んでいる。
最寄り駅は人気の小田急線某駅だが、徒歩約二五分と離れているため、借りるとき「少しマケてよ、といって二万円ほど値切った」らしい。
当初の提示故は一七万~一八万円だったのだろう。
もっとも、「遠いからマケて」といったT君だが、実際には「サラリーマンのように毎日通勤があるわけではないし、クルマで動くことも多いので、駅までの距離はそれほど苦にならない」とちゃっかりしたものだ。
東京圏のファミリー向け賃貸マンション家賃の推移家賃も下がっていて、ローン返済に見合うだけの家賃で貸せる保証稀少物件には違いないが、探せばこの手の掘り出し物がけっこうあるのが、いまの賃貸市場だ。
五、六年前までは2LDKや3DKの手頃なマンションを探すのは一苦労だったが、いまではずいぶん数が増えた。
とにかく物件のタイプは豊富になったし、家賃も目に見えてトがった。
九二~九三年が家賃のピークで、そこから下がり続けている。
家賃の値下がりは借り手にとっては万々歳だが、貸すとなると大変だ。
「手持ちのマンションが売れないなら貸せばいい」といっても、ローン返済に見合うだけの家賃で貸せる保証はない。
それこそ駅までバスを使うような物件では借り手を探すのも一苦労だ。
人気の沿線であっても駅から二〇分以上も離れれば、入居者募集の看板があちこちのアパートやマンションに立っている。
家賃設定を誤れば、いつまでたっても借り手がつかない。
実際、三〇代の知人が四年半ほど前から杉並区内に借りている分譲タイプの3LDK(約六〇一山)は、管理費込みで月額一六万五〇〇〇日だが、彼が借りるまでは家賃設定が二万円ほど高く、一年以上、借り手がつかなかったらしい。
その間、全く家賃収入が得られず、仕方なく値下げしたようだ。
知人によれば、「オーナーはこれ以上家賃を上げると、ボクに逃げられると思っているようで、すでに一一回更新したけど、いずれも家賃は据え置きだった」という。
いまは店子の顔色をうかがいながらの賃貸経営にならざるを得ないのだ。
これが賃貸市場の現実で、これからは一度買ってしまえば、売るのはもちろん、賃貸に出すのも容易なことではない。
「何かあったら売ればいい、貸せばいい」などと安易な気持ちで買うのは絶対にやめるべきである。
遠隔地の(戸建て離れ)が進んでいる。
最寄り駅から都心までバス便利用で一時間半ないしそれ以上かかるような千葉とか埼玉の先の方にある遠隔地の建て売り住宅の売れ行きが極端に悪くなっているのだ。
九一年頃までは五倍とか一〇倍とかの高倍率で、売り出せばすぐに完売した人気の住宅団地でも、いまでは建てたもののさっぱり売れない完成在庫がゴロゴロしている有り様だ。
遠くの戸建てはなぜ売れなくなったのかー。
いちばんの理由はバブル崩壊後の地価の下落だ。
九二年に二一倍の抽選を勝ち抜いて千葉県山武郡某町の住宅団地に四七五〇万円の一戸建てを購入した四〇代半ばの知人は、こういって嘆いた。
「坪四、五万円だったのに宅地開発されて一時は坪五、六〇万円までいった。
それがいまでは坪三〇万日かそこら。
それだけ出せる人は、もっと都心に近くて生活にも便利な千葉市に行っちゃう。
とにかく誰も買わない。
周囲を見渡せば、近所は空き地だらけ。
夜なんて.人じゃこわくて歩けない。
当初見込みの半分以下しか売れてないから、バスの本数は増えないし、駅前商店街の整備とか、その他諸々の計画も青写真段階でことごとくストップしたまま。
さっさと売っぱらってもっと都心に近いマンションにでも買い換えたいが、半値でも売れそうにない。
それじゃローンが残っちゃう。
あんなところに家を買ったのは、人生最大の屈辱的な大失敗だった」この知人と同じように頭を抱えている人はたくさんいるはずだ。
地価暴騰の大波に追われて千葉や埼玉の先まで来たが、ふと気がつけば、地価暴落の引き潮に乗ってマイホーム希望者はどんどん都心回帰を進めてしまい、もはや後から来る者は誰もいなかった、というわけだ。
遠隔地の戸建て離れの背景としては、こうした地価下落にともなうマイホームの都心回帰のほか、バブル崩壊後の不動産暴落で、それまでのような資産としての一戸建て住宅の魅力がなくなったことも大きい。
特に地価下落の激しい都心から遠く離れた一建ては、知人の例が示すように、毎日の長距離通勤を犠牲にしてまで買うだけのメリットがなくなってしまった。
折しも不況の長期化で奥さんが働きに出るケースが増え、通勤や暮らしの利便性という点から、遠隔地の戸建てはますます敬遠されるようになった。
そんなときやってきたのが第六次マンションブームで、一次取得者向けの低価格物件を中心に大量の新築マンションが供給された。
住宅取得を考えていた人たちは、一斉にこれに飛びついた。
そして「遠くの一戸建てなんか無理して買っても何のトクにもならない。
そんなものに四〇〇〇万円も出すなら、もっと都心に近いところに同程度の価格のマンションを買った方がよっぽどいい」と考えるようになった。
こうして遠くの戸建てからより都心に近いマンションへと需要がシフトしてしまった。
千乗とか埼玉の先の遠隔地の住宅団地に閑古鳥が鳴いているのはそのためで、いまでは敷地や建物を小さくして「お安くなりましたよ」と売っている。
何のことはない、一回り小さくなった豆腐を「お買い得だよ」といって売っているようなものだ。
販売価格に大きな比重を占める土地部分について、土地所有権方式から地上権方式や定期借地権方式に切り替えて一〇〇〇万円以上も販売価格を切り下げるケースも出てきたが、売れ行きは芳しくないようだ。
いまや五%の値引きは当たり前といわれる戸建て住宅だが、住宅地価の下げ止まりが期待できない状況では、今後も販売価格は引き続き低下すると見るのが止解だろう。
とりわけ遠隔地の物件は買い手に乏しく、大幅な下落が続くと思う。
間違っても土地があるからなどという資産目当てで千葉や埼玉の先に戸建てなど買わないことだ。
もちろん一戸建ての場合は、立地や土地面積などから見た物件の稀少性も重要な価格決定要因だから、人気の高級住宅地などでは物件によっては価格の下げ止まり、もしくは上昇があってもおかしくはない。
しかしそれはあくまで個別の物作やエリアの話であって、戸建て市場の全体論で見れば、やはり地価が下げ止まらない限り、販売価格の下落は避けられない。
また日本では住宅部材や設備機材の複雑な流通経路や規格の不統一がコスト高の一閃になっているが、将来的には規制媛和によって、こうしたムダな建築コストも削減されるはずだ。
そうなれば戸建て価格はさらに下がるだろう。
マンション同様、一戸建ての底値もまだ見えないのである。
「いま家を買うべきか、待つべきか」の議論は、物件価格というモノサシだけで見るならば、つまり第3章で詳述する品質や管理や維持費といった住宅のハードやソフトやコストの側面をとりあえず脇に置くところ、今後の地価動向をどう読むかにかかっている。
そろそろ地価は大底と見れば、買えばいいし、まだ下がると思うなら、待った方がいい。
個人的には地価はまだまだ下がると考えている。
理由は山ほどある。

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